Writing for Painting1&2 of 河端通浩 web site



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河端通浩 web site Last Updated 2015-09-05



 「見えないこと・見えること・見ようとすること」をテーマのひとつとして制作している。                .
 視覚において生ずる混乱は、見る人が自分の主観的把握と対象とのあいだの不均衡に気づいたときにおこる。一部の動物が備えている生存のための機能である保護色を例にあげてみよう。蛙が自らの皮膚の色を変えて風景にとけ込むとき、わたしたちは風景の一部だと思っている岩を蛙だとは思わない。逃げたものを見つけたとき、逃げたものから受付る刺激は大きい。一方で観念がつきまとう前の網膜に映る光の現象、幼児の視覚からは別種の刺激を受ける。
 一方は鋭角的で、もう一方は丸みを帯びた刺激に思われる。 (2008年1月)




 夜空に輝く星々を結んでいくと様々なかたちが出現してくる。
 小さい頃、既存の星座を確かめるようにそれらを視るだけでなく、自分なりに星と星を結んでいき、かたちをつくることを楽しんだり出来上がったかたちに驚いたりした。また、結んだ線を消すようにして、無数に散らばっている星としての美しさを味わったりした。
 私たちの祖先も同様に夜空を眺め、未だ星座として確定されていない無数の星から、意味を伴ったかたちを創造したのであう。
 私たちが普段生活している世界の事物もまた、星がかたち(星座)となっていない状態と同様に、本来、未確定なものの混沌とした集まりなのではないだろうか。つまり可変的で可能性に満ちた事物がここには在り、その境界は溶解し刻一刻と流動している。私たちの心もまたそれと同様であると思われる。
 私の絵画においての追求は、そうした世界の豊かさや心の豊かさと同質なものの創造である。 (2009年10月)